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まず業務構造、その先にAI|TECH BEAT2026セッションイベント 静岡銀行様登壇レポート

地銀2行の実例から学ぶ、暗黙知の形式知化とAI統合の実践

2026-07-24
まず業務構造、その先にAI|TECH BEAT2026セッションイベント 静岡銀行様登壇レポート
2026年7月23日(木)、TECH BEAT Shizuoka 2026のセッションイベントとして、株式会社Wewillは「まず業務構造、その先にAI。地方銀行の実例から学ぶ暗黙知の形式知化とAI活用の実践」と題したセミナーを開催しました。

登壇したのは、株式会社Wewill 取締役COOの黒野浩大、取締役CTOの鳥居良光。そして本セミナーの主役として、株式会社静岡銀行 経営管理部 防災・管財グループより山田直人様、大石倭士様にゲストとしてご登壇いただきました。

会場には多くの参加者にお集まりいただき、「業務の可視化」がいかにしてAI活用の土台になるのか、静岡銀行様における実際の取り組みを通じてお伝えする内容となりました。本記事では、当日の内容をレポートします。

TECH BEAT2026セッションイベント 対談の様子
TECH BEAT Shizuoka 2026 セッションイベント 対談の様子

1SYNUPSとは

株式会社Wewillは2017年創業、静岡県浜松市に本社を置き、東京・名古屋・福岡にも拠点を持つスタートアップです。バックオフィス業務に特化した分業管理プラットフォーム「SYNUPS(シナプス)」の開発・提供と、業務の可視化伴走支援・経理労務のアウトソーシングをはじめとするバックオフィス関連サービスを、事業の柱としています。

今回の静岡銀行様の事例の中心にあるのが、このSYNUPSです。SYNUPSは、日々のタスク管理を通じて「誰が・何を・いつ」を可視化し、属人化していた業務手順を組織のナレッジとして蓄積していくツールです。常に最新の手順が手元にあることで、引き継ぎや分業がしやすくなることを狙って開発されています。

2静岡銀行様・高知銀行様、2つの実例

Wewillは静岡銀行様に加え、高知銀行様の業務可視化・SYNUPS導入もご支援しています。両行に共通するのは、「第三者による現状業務の可視化」からプロジェクトが始まったという点、そして両行とも過去のTECH BEAT Shizuokaでのご縁がきっかけとなってご支援が始まったという点です。

静岡銀行様のケースでは、全店舗・拠点の固定資産(取得・除売却・減価償却・修繕など)を管理する「防災・管財グループ」様が対象となりました。管理対象は5万件超の固定資産明細。特殊性の高い業務であるがゆえに「職人芸化」「形骸化したマニュアル」「難航する引き継ぎ」という課題を抱えており、手順マニュアルなきブラックボックス状態からのスタートでした。

Wewillはまず「AI導入」からではなく、業務の棚卸し・分類・SYNUPSへの一元登録という「業務構造の可視化」から着手。その過程で、「手順化できる業務」と「正解が複数ある業務(担当者の暗黙知に依存する判断業務)」が明確に切り分けられたことが、大きな気づきとなりました。

ちょうど静岡銀行様がMicrosoft Copilot Studioの活用を検討し始めていたタイミングと重なったことから、後者の「判断業務」を補助する2つのAIボット(固定資産登録判断補助bot/見積仕訳区分判断補助bot)を構築。可視化によって課題が高解像度で特定できていたことで、構想から構築までおよそ1ヶ月という短期間での実装が実現しました。

3対談:静岡銀行様に伺う、プロジェクトのリアル

事例の解説に続き、鳥居がファシリテーターとなり、山田様・大石様との対談セッションが行われました。

導入前の不安、そして払拭された理由

山田様からは、当初「Wewill」という社名自体をご存じなかったこと、また管理部門はコンサルティングを受ける機会自体が少なく、長年同じ業務を担当してきたベテランスタッフが外部との対話に馴染めるかという不安があったことを率直にお話しいただきました。

一方で、実際にヒアリングが始まると、その不安は良い方向に裏切られたといいます。普段の業務について語る機会自体がこれまでなかったベテランスタッフの皆様が、生き生きとした様子で自らの業務を語ってくださったこと、それ自体がプロジェクトの推進力になったというお話がありました。セキュリティ・ガバナンス面についても、事前の守秘義務契約の締結などにより安心して進められたとのことです。

約4ヶ月・20回超のヒアリングで起きたこと

続いて、実際のヒアリングプロセスについて振り返っていただきました。

答えに詰まった質問

「なぜそうするのか」を深掘りされることで、当たり前すぎて説明しきれなかった判断基準に気づく場面があったこと

言葉になった暗黙知

耐用年数や償却方法の選択など、口頭で引き継がれてきた「そういうものだ」という判断が、初めて言語化されていったこと

外部だからこそ立ち止まれた

日々の業務に追われる中で、腰を据えて引き継ぎのための時間を確保する契機になったこと

対談では、こうした変化がベテランスタッフの皆様にとっても前向きな効果を持っていた様子が語られ、外部の第三者が入ることの価値が改めて確認されました。

4引き継ぎ後の実感と、これからの抱負

静岡銀行への入行2年目を迎える大石様には、実際にSYNUPSを使いながら業務を引き継いだ実感を伺いました。

以前は複数存在するWordファイルのどれが最新か分からない状態から業務を探し始める必要があったところ、SYNUPSに手順が一元化されたことで「これを見ればいい」という軸ができ、業務への着手が早くなったといいます。今後については、「次の担当者が自分に確認しなくても業務を進められる精度」を目指してSYNUPSを育てていきたいというお話がありました。

山田様からは、管理職の立場から見た変化として、形骸化していたマニュアルがSYNUPS上で最新の状態に保たれるようになったこと、そして大石様のようなデジタルに強い若手が中心となって浸透を推進していく期待についてお話しいただきました。あわせて、引き継ぎだけでなく、グループ会社への業務委託などにも今後SYNUPSを活用していきたいという展望も共有されました。

5AI活用の裏側:判断補助botの実際の使われ方

AI活用についても、対談の中で率直な感想を伺いました。

大石様からは、AIの提案をそのまま正解として採用するのではなく、ベテランスタッフによるチェックを経て運用している段階であること、SYNUPSと同様にAIも「これから育てていく」フェーズにあるという現状についてお話しいただきました。

山田様は、共通経費・諸経費の按分作業について、AIが提示する仕訳が実際の担当者の判断とほとんど変わらない精度を示したことに手応えを感じたと振り返っています。

鳥居からは、技術的な補足として、決算を終えた勘定データを「正解データ」と位置づけ、そこで使われたコードと固定資産の対応関係を教師データとしてAIに学習させたことが、短期間での実装を可能にした要因であると説明がありました。「正解データを作ってきたのは、これまでのベテランの方々である」という点が、AI活用の土台としての可視化の意義を象徴するエピソードとして紹介されました。

6可視化は戦略である

対談パートを終え、後半は「可視化は戦略である」というテーマで黒野・鳥居によるディスカッションが行われました。

可視化は単なる作業ではなく、「痛み(見えない状態)」を「フラット(見える状態)」に戻すプロセスであり、そこから初めて「動き出す(AIや改善策の検討)」ことができるという整理が示されました。また、属人化した業務ほど当事者には「当たり前」に見えてしまうという構造的な理由から、良い可視化は経営層起点+第三者の目によって進むというお話もありました。実際、静岡銀行様・高知銀行様のプロジェクトも、経営層がTECH BEAT Shizuokaの場で意思決定されたことから始まっています。

SYNUPSというプロダクト名は「Synapse(シナプス)」に由来し、可視化された一つひとつの業務が組織という「脳」の中でつながり合っていくイメージを込めた造語であることも紹介されました。

7どこから始めるか:まずは経理から

セミナーの締めくくりとして、可視化に取り組む際の最初の一歩について提案がありました。

Wewillが推奨するのは「経理から始める」というアプローチです。経理は全社の数字が集約される最上流の部門であり、そこから遡ることで各現場のプロセスを芋づる式に把握しやすいためです。当日は、経理担当者が現場に出向いて業務改善を進めているという直近の報道事例も紹介されながら、可視化は守りであると同時に、AI時代を勝ち抜くための攻めの土台にもなるというメッセージで締めくくられました。

8まとめ

  • まず業務構造、その先にAI:地図(業務構造の可視化)ができて初めて、AIは短期間でも成果につながる
  • 暗黙知は第三者の目で形式知になる:当事者には「当たり前」に見える業務も、外部の視点とSYNUPSによって初めて可視化される
  • 可視化は戦略である:現場改善にとどまらず、意思決定の質を変え、AIが乗る土台をつくる
  • 始めるなら「経理」から:数字が集約される最上流だからこそ、全社の可視化・改善が動き出しやすい

9登壇者

山田 直人

株式会社静岡銀行
経営管理部 防災・管財グループ 課長

大石 倭士

株式会社静岡銀行
経営管理部 防災・管財グループ

黒野 浩大

株式会社Wewill
取締役 COO カスタマーサクセス部 部長

鳥居 良光

株式会社Wewill
取締役 CTO 開発・IT統制部 部長

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