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ベテラン退職後、業務は止まらないか?金融機関が今取り組むべき「スキルベースマネジメント」

業務定義が解く、金融機関管理部門の引き継ぎリスクと人材育成の停滞

2026.03.04
ベテラン退職後、業務は止まらないか?金融機関が今取り組むべき「スキルベースマネジメント」
引き継ぎ資料はある。でも実態とは違う。人事ローテーションしたいが、あの人がいなくなると業務が止まる。若手に任せたいが、どこから任せればいいかわからない。この3つのうち一つでも心当たりがあれば、この記事は読む価値があります。

スキルベースマネジメントとは:業務を分解・定義し、チームや個人のスキルを実務データに基づいて可視化することで、配置・育成・評価を客観的に設計するマネジメント手法。自己申告や上司の印象ではなく、実務ログという根拠に基づく点が従来の人材管理と異なります。

101|3つの情景——管理部長が直面していること

情景① 引き継ぎの限界

Aさんが異動になるとわかった時点で、初めてその業務の全貌が見えた。マニュアルはある。しかし過去の監査対応の経緯、例外処理の判断基準、取引先との暗黙の確認フロー。それらはどこにも書かれておらず、Aさんの頭の中にだけある。引き継ぎ期間は3ヶ月。それで足りるかどうか、誰も自信を持って言えない。

情景② ローテーションの停滞

人事からローテーション計画の提出を求められるたびに、頭を抱える。動かしたい人はいる。しかし「あの業務だけは動かせない」という箇所が必ず出てくる。誰がどの業務をどこまで担えるのか、客観的なデータがない。結果として、ローテーションは毎年先送りになる。

情景③ 若手の早期離職

せっかく採用した若手が3年以内に辞めていく。厚生労働省の統計(新規学卒就職者の離職状況・令和4年3月卒業者)※1 によれば、金融・保険業における新規大卒就職者の3年以内離職率は25%に達している。面談で理由を聞くと「成長している実感が持てない」という言葉が返ってくる。何を教えればいいか、どこまで育てればいいか、管理部長自身も明確に答えられない。育成計画はあるが、それが実際の業務とどう連動しているかは曖昧なままだ。

これら3つは別々の問題ではない。根っこは一つ、業務が見えず、定義されていないことにある。

※1 厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者) https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001580844.pdf

202|属人化は「担当者の問題」ではなく「構造の問題」である

業務処理には2種類の知識が必要だ。一つは汎用知識。会計基準、税法、金融規制など、資格や研修で習得できるもの。もう一つが固有知識。その組織固有の規定解釈、過去の経緯に基づく判断基準、合併前からの慣行、例外処理のロジックである。

属人化とは、この固有知識が特定の担当者の頭の中にのみ存在している状態を指す。担当者が優秀であればあるほど、固有知識はその人の中に蓄積される。そして組織はその人に依存し続ける。

これは担当者の資質の問題でも、管理部長の管理能力の問題でもない。限られた人員で高度な業務を長期間回し続けた結果として、構造的に発生するものだ。しかし管理部長の立場では、これを「いつか問題になるリスク」ではなく「すでに進行中のリスク」として認識する必要がある。

管理部長の職責から見た3つのリスク

  • リスク①「引き継ぎリスク」:退職・異動・病気という引き金が引かれた瞬間、固有知識が組織から失われる。マニュアルは残るが、判断基準は残らない。
  • リスク②「牽制機能の形骸化」:特定の担当者にしか判断できない業務は、チェック機能が実質的に働いていない状態だ。業務の属人化は不正や誤謬を招く「組織の脆弱性」そのものとなりうる。
  • リスク③「育成の停滞」:固有知識が可視化されていなければ、何をどの順番で教えるべきかの設計ができない。結果として育成は「背中を見て覚える」に依存し続ける。

303|なぜ「今」動く必要があるのか—3つの外部圧力

背景には、避けて通れない3つの外圧がある。

1. 世代交代のカウントダウン(2030年問題)

内閣府の『令和5年版 高齢社会白書』※2 が示す通り、生産年齢人口の減少は加速の一途をたどっている。金融機関の管理部門においても、10年以上の業務経験を持つ50代後半〜60代のベテランが順次退職する流れはすでに始まっており、2030年代後半以降は団塊ジュニア世代の退職が本格化することで、この流れがさらに加速することが予測される。問題は退職そのものだけではない。2030年時点で644万人の労働力不足が見込まれる中、「辞めた人の代わりが採れない」という構造が、固有知識の喪失リスクをかつてなく深刻にしている。

2. 監督官庁の目線の変化

金融庁が公表した『内部統制報告制度(J-SOX)』の改訂基準(2024年4月施行)※3 において、業務の属人化は内部統制の有効性を阻害する構造的な要因としてみなされるようになった。「特定の担当者に依存せず、業務が継続できる体制」の整備は、単なる効率化の枠を超え、企業のコンプライアンス責任として重みを増している。

3. 若手が求める「キャリア安全性」

リクルートワークス研究所の「職場の『キャリア安全性』を考える」※4 では、「この職場で市場価値が高まる」という実感(キャリア安全性)が低い若手は早期離職を希望するというデータが出ている。育成経路が定義されていない部署には、優秀な若手が来なくなるか、来ても短期間で離れていく。「この部署ではこの順番でこのスキルが身につく」と管理部長が示せるかどうか。それが今、採用力と定着率に直結している。

※2 内閣府『令和5年版 高齢社会白書』https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/05pdf_index.html
※3 金融庁『内部統制報告制度(J-SOX)』の改訂基準(2024年4月施行)
https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2023/20230615_No.2329.pdf
※4 リクルートワークス研究所「職場の『キャリア安全性』を考える」
https://www.works-i.com/research/project/youth/solution/detail003.html

404|解決の入口——業務を「分解して定義する」

一つの業務を「高度な判断を要する統制業務」と「習熟すれば若手でも担える作業・チェック業務」に分解すると、ローテーションの設計図が初めて見えてくる。

ベテラン社員が担っている業務のすべてが難しいわけではない。分解してみると「この確認作業は入社2年目でも担える」「この判断業務だけは本当にベテランでなければできない」という実態が見えてくる。

統制判断はベテランが担い、作業・チェックから段階的に後任が入る。この設計が、業務を定義して初めて可能になる。加えて、業務定義はRPA・AI導入の前提整備でもある。業務が定義されていない状態でのデジタル化は失敗の典型であり、定義こそが将来のDX投資の効果を最大化する地盤となる。

505|高知銀行での活用事例——「組織知」への変換

デジタル化推進に力を入れている高知銀行様。少数精鋭の担当者が支える専門業務において、業務の見える化と業務定義・標準化に取り組んだ事例だ。

課題

10年以上のベテランが持つ独自のメモやExcel。マニュアルが統一されておらず、異動者は前任者の知見を手探りで辿るしかなかった。業務の全体像が個人の記憶に依存しており、引き継ぎのたびに「知識の断絶」が発生していた。

プロセス

散在していたメモやExcelを集約し、実務者へのヒアリングを通じて業務の詳細を紐解いた。各業務の手順・判断基準・例外処理を体系化し、業務の可視化・分業プラットフォーム(SYNUPS)へ落とし込んだ。

変化

情報を探す手間が省けただけではない。「今やるべきこと」が可視化されたことで、閑散期の担当者が繁忙期の業務を支援するといった、チーム連携の動きが自然発生するようになった。業務の垣根を超えた協力体制が、ツール導入をきっかけに組織文化として根づき始めている。

「担当業務の垣根を超え、チームで連携する風土が高まった」

▶ 高知銀行 事例記事はこちら

606|業務定義の先にあるもの——スキルベースマネジメントの核心

業務定義の運用で得られる最も重要な資産は、チームと個人のスキルを可視化できるデータだ。

SYNUPSのレポート機能は、チームや個人の進捗・成果・業務負荷をリアルタイムで可視化する。誰が今何をどの難易度で担っているかが蓄積されたデータとして記録され、それが個々のスキルと成長ポイントの明確化につながる。自己申告でも上司の印象でもなく、実務ログという客観的な根拠に基づいて、適切な評価と配置を実現する。これがスキルベースマネジメントの核心だ。

管理部長にとっての3つの活用場面

  • ローテーション計画の根拠データ:印象ではなく、誰がどの業務をどこまで担えるかの実務データで人事と議論できる。
  • 部下へのキャリア安全性の提示:実務データに基づき「このスキルが身につく」と示すことは、若手の離職を防ぐ武器になる。
  • 人事制度との連動:ジョブ型雇用への移行において、実務ログに基づくスキルデータは制度設計の強力な根拠となる。

707|わたしたちについて

Wewillは、BPaaSによりバックオフィス業務の可視化・定義と運用を一気通貫で提供している。自社開発のプラットフォーム「SYNUPS(シナプス)」を用いて、属人化解消とスキル可視化を同時に実現する。

提供しているのは、ツールだけでも人手だけでもない。「業務が見える組織になるための設計と実働」だ。

※BPaaS:Business Process as a Serviceの略。SaaSと人による業務運営支援を組み合わせ、企業の業務プロセスを一括で担うサービス。

本稿は、2026年2月24日に名古屋・STATION Aiにて開催された「Central Japan Startup Pitch in STATION Ai」における、弊社の登壇内容を基に構成・執筆しています。中部・東海エリアのVC・CVC・金融機関など約50名が参加する中、選抜スタートアップ7社のうちの1社として「スキルベースマネジメント」をピッチテーマに登壇しました。

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